商標登録出願の早期審査

[作成・更新日:2018.9.25]

 早期審査とは、一定の要件を満たす場合に優先的に審査を受けることができる制度です。
 商標登録出願のファーストアクション期間(出願から一次審査の結果が通知されるまでの期間)は、平均で5.6ヶ月であるところを早期審査を利用すれば、早期審査の申請から一次審査の結果が通知されるまでの期間を平均で1.9ヶ月に短縮することができます(特許行政年次報告書2018年版の2017年のデータ)。

商標登録出願の早期審査1

 2013年から2015年あたりは、特許庁の『世界最速・最高品質の審査の実現』の目標の下、通常の審査期間であっても約4ヶ月にまで短縮されましたが、近年の商標登録出願件数の増大に伴い、審査期間が延びてきているため、早期審査は十分に利用価値のあるものといえます。
 早期審査の詳細については、特許庁HPの『商標』の『審査に関する情報』における『早期審査について』を確認いただくとして、ここでは、その中から出願人にとって必要な情報を提供いたします。

早期審査の対象となる商標登録出願

 次の六つの要件のいずれかに該当する商標登録出願が早期審査の対象となります。したがって、いずれの要件にも該当しなければ、早期審査を申請することはできません。

要件(1)-(1)
 出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に既に使用していて、かつ、権利化について緊急性を要する出願であること

要件(1)-(2)
 出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に使用する準備を相当程度進めていて、かつ、権利化について緊急性を要する出願であること

要件(2)-(1)
 出願人又はライセンシーが、出願商標を既に使用している商品・役務のみを指定している出願であること

要件(2)-(2)
 出願人又はライセンシーが、出願商標の使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願であること

要件(3)-(1) (平成29年2月の改訂により追加)
 出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に既に使用していて、かつ、商標法施行規則別表や類似商品・役務 審査基準等に掲載されている商品・役務のみを指定している出願であること

要件(3)-(2) (平成29年2月の改訂により追加)
 出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に使用する準備を相当程度進めていて、かつ、商標法施行規則別表や類似商品・役務 審査基準等に掲載されている商品・役務のみを指定している出願であること

要件(1)-(1)について

① 商標の「使用」とは、商標法2条3項に規定する次の行為をいいます。
3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一 商品又は商品の包装に標章を付する行為
二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。次号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
九(略)
十 前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為

② 商標登録出願において、複数の商品・役務を指定しているときは、そのいずれかについて使用していることを証明すれば、「出願商標を指定商品・指定役務に既に使用していて」の要件を満たすこととなります。すなわち、後述する要件(2)-(1)や要件(2)-(2)とは異なり、少なくとも一部の指定商品・指定役務について出願商標を使用していればよく、残りの指定商品・指定役務について出願商標を使用していなくてもよいということになります。

③ 使用していることの証明として、例えば次のような資料を提出する必要があります。
ア.商標が付された商品を撮影した写真
イ.商標が付された役務の提供の用に供する物を撮影した写真
ウ.商標が付された商品・役務が掲載されたパンフレット又はカタログ
エ.商標が付された商品・役務が掲載された広告

④ 出願商標と使用している商標の同一性については、両者が社会通念上、外観において同視できる態様(例えば、明朝体とゴシック体の相違、縦書きと横書きの相違)であれば認められます。いいかえれば、出願商標とは社会通念上、外観において同視できない商標を使用しても、要件(1)-(1)の「使用」には該当せず、その出願は早期審査の対象とはなりません。

⑤ 「権利化について緊急性を要する出願」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
ア.出願商標について、第三者が無断で使用している(使用の準備を相当程度進めている)場合
イ.出願商標の使用について、第三者から警告を受けている場合
ウ.出願商標について、第三者から使用許諾を求められている場合
エ.出願商標について、出願人が日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へも出願中である場合
オ.出願商標について、出願人がマドプロ国際出願(正式には「マドリッド協定の議定書に基づく国際登録出願」)の基礎出願とする場合

要件(1)-(2)について

① 商標の「使用」については、要件(1)-(1)の①と同じです。

② 商標登録出願において、複数の商品・役務を指定しているときは、そのいずれかについて使用の準備を相当程度進めていることを証明すれば、「出願商標を指定商品・指定役務に使用する準備を相当程度進めていて」の要件を満たすこととなります。すなわち、後述する要件(2)-(1)や要件(2)-(2)とは異なり、少なくとも一部の指定商品・指定役務について出願商標の使用の準備を相当程度進めていればよく、残りの指定商品・指定役務について出願商標の使用の準備をしていなくてもよいということになります。

③ 使用の準備を相当程度進めていることの証明として、例えば次のような資料を提出する必要があります。
ア.商標が付された商品・役務が掲載されたパンフレット、カタログ等の印刷についてその受発注を示す資料
イ.商標が付された商品・役務が掲載された広告についてその受発注を示す資料
ウ.商標が付された役務の提供の用に供する物の受発注を示す資料
エ.商標が付された商品・役務に関するプレス発表や新聞記事等の資料

④ 出願商標と使用の準備をしている商標の同一性については、両者が社会通念上、外観において同視できる態様(例えば、明朝体とゴシック体の相違、縦書きと横書きの相違)であれば認められます。いいかえれば、出願商標とは社会通念上、外観において同視できない商標の使用の準備をしても、要件(1)-(2)の「使用の準備」には該当せず、その出願は早期審査の対象とはなりません。

⑤ 「使用する準備を相当程度進めていて」とは、早期審査の申請から3ヶ月以内に使用を開始する予定がある程度の状態をいいます。

⑥ 「権利化について緊急性を要する出願」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
ア.出願商標について、第三者が無断で使用している(使用の準備を相当程度進めている)場合
イ.出願商標について、第三者から使用許諾を求められている場合
ウ.出願商標について、出願人が日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へも出願中である場合
エ.出願商標について、出願人がマドプロ国際出願(正式には「マドリッド協定の議定書に基づく国際登録出願」)の基礎出願とする場合

要件(2)-(1)について

① 商標の使用については、要件(1)-(1)の①と同じです。

② 使用の証明については、要件(1)-(1)の③と同じです。

③ 出願商標と使用している商標の同一性については、要件(1)-(1)の④と同じです。

④ 「商品・役務のみ」という要件なので、出願商標の使用が確認できない商品・役務が含まれている場合、たとえば、実際に使用している商品は「かりんとう」のみであるが、出願の願書において、「和菓子,洋菓子,パン」を指定商品としている場合は、早期審査の対象として認められません。ただし、このような場合であっても、早期審査の申請以前(又は同時)に、使用していない商品・役務を削除する補正を行えば、「商品・役務のみ」の要件を満たすこととなります。

要件(2)-(2)について

① 商標の使用については、要件(1)-(1)の①と同じです。

② 使用の準備の証明については、要件(1)-(2)の③と同じです。

③ 出願商標と使用の準備をしている商標の同一性については、要件(1)-(2)の④と同じです。

④ 「商品・役務のみ」という要件なので、出願商標の使用を準備していることが確認できない商品・役務が含まれている場合、たとえば、使用の準備をしている商品は「かりんとう」のみであるが、出願の願書において、「和菓子,洋菓子,パン」を指定商品としている場合は、早期審査の対象として認められません。ただし、そのような場合であっても、早期審査の申請以前(又は同時)に、使用の準備をしていない商品・役務を削除する補正を行えば「商品・役務のみ」の要件を満たすこととなります。

⑤ 「相当程度進めていて」の程度については、要件(1)-(2)の⑤と同じです。

要件(3)-(1)について(平成29年2月の改訂により追加)

① 商標の使用については、要件(1)-(1)の①、②と同じです。

② 使用の証明については、要件(1)-(1)の③と同じです。

③ 出願商標と使用している商標の同一性については、要件(1)-(1)の④と同じです。

④ 「商標法施行規則別表や類似商品・役務 審査基準等に掲載されている商品・役務のみを指定している出願」とは、a) 商標法施行規則6条の別表、b) 類似商品・役務審査基準、c) 商品・サービス国際分類表(ニース分類)、のいずれかに掲載されている商品・役務のみを指定している出願をいいます。

⑤ 「商品・役務のみ」という要件なので、指定商品・指定役務の記載中に、上記a)~c)に掲載されていない商品・役務が含まれている場合には、早期審査の対象として認められません。ただし、このような場合であっても、早期審査の申請以前(又は同時)に、上記a)~c)に掲載されていない商品・役務を削除する補正を行えば、「商品・役務のみ」の要件を満たすこととなります。

要件(3)-(2)について(平成29年2月の改訂により追加)

① 商標の使用については、要件(1)-(1)の①と同じです。

② 使用の準備については、要件(1)-(2)の②と同じです。

③ 使用の準備の証明については、要件(1)-(2)の③と同じです。

④ 出願商標と使用の準備をしている商標の同一性については、要件(1)-(2)の④と同じです。

⑤ 「商標法施行規則別表や類似商品・役務 審査基準等に掲載されている商品・役務のみを指定している出願」については、要件(3)-(1)の④、⑤と同じです。