[作成・更新日:2018.1.10]
商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務(サービス)を指定してしなければなりません(商標法6条1項)。この指定された商品、役務のことを指定商品、指定役務といいます。商標権には、登録商標を指定商品・指定役務に独占的に使用する権利(専用権、商標法25条)と、他人による登録商標及び指定商品・指定役務の類似範囲での使用を禁止する権利(禁止権、商標法37条1号)とがありますが(下図参照)、専用権にしても禁止権にしても商標権の効力は、登録商標、指定商品・指定役務によって画されるため、商標登録出願において商品・役務を適切に指定することが極めて重要となります。
商品、役務は、その内容によって、第1類から第34類までの商品区分と、第35類から第45類までの役務区分とに分けられており(商標法施行令1条の別表)、そして、それぞれの区分にどのような商品、役務が区分けされているかは、商標法施行規則6条の別表に規定されています。
したがって、商標登録出願において商品・役務を指定する際は、まずは、商標法施行規則6条の別表(あるいはこの別表に対応して設けられた、商品、役務の類似関係の統一的基準となる『類似商品・役務審査基準』)や、『商品・サービス国際分類表(ニース分類)』を参照することになります。
しかし、これらに掲載されている商品、役務は、包括表示ないし例示であるため、これらの中に自己の商品・役務を含むものがない場合や、自己の商品・役務が含まれるかどうかが明らかでない場合があります。
このような場合、自己の商品・役務についての専用権を確保する観点から、自己の商品・役務を指定(商標登録出願の願書に自己の商品・役務を指定商品・指定役務として記載)するようにする必要があります。これを商品・役務の「積極表示」といいます。
商品・役務の積極表示を心掛けましょう!
商品・役務を積極表示する場合、「指定された商品・役務の内容及び範囲が明確」な名称であることに留意すべきです(商標法6条1項、15条3項)。
このとき、便利なのが、『特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)』の『商標』の『商品・役務名検索』です。
たとえば、ビール系飲料には四種類ありますが、商品を発泡酒とする場合を例に挙げてみます。
種類 | 酒税法上の表記 |
---|---|
ビール | ビール |
発泡酒 | 発泡酒 |
新ジャンル (第3のビール) |
その他の醸造酒(発泡性)① |
新ジャンル (第4のビール) |
リキュール(発泡性)① |
発泡酒は、麦芽の使用比率が原料の3分の2に満たなかったり、ビールで認められていない原料を用いたものであり、ビールとは異なります。そして、商標法施行規則6条の別表には、32類にビールが挙げられていますが、発泡酒は挙げられていません。
そこで、『特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)』の『商標』の『商品・役務名検索』を使って「発泡酒」を検索してみます。
<検索結果>
すると、「ビール風味の麦芽発泡酒」という商品名の登録事例が多いことから、商品名は、単に「発泡酒」とするのではなく、「ビール風味の麦芽発泡酒」とする方が商標法6条1項の観点(商品名の明確性の観点)からリスクがないということがいえます。
実際、いずれも発泡酒のカテゴリーに属するキリンの「淡麗」、アサヒの「スタイルフリー」、サッポロの「極ZERO」について、それらの登録商標の指定商品は「ビール風味の麦芽発泡酒」となっています。
ちなみに、第3のビールは、麦芽を用いず、穀類、糖類などの原料を用いたもの、第4のビールは、発泡酒に麦由来のスピリッツや蒸溜酒などを加えたものであるところ、第3のビールの商品名は、「麦芽及び麦を使用しないビール風味のアルコール飲料」、第4のビールの商品名は、「麦芽及び麦を使用したビール風味のリキュール」、「麦芽又は麦を使用したビール風味のリキュール」、「麦芽又は麦を使用したビール風味のアルコール飲料(ビール、ビール風味の麦芽発泡酒を除く。)」といった商品名となります。
なお、適切な商品・役務名を調査する方法として、上記の方法以外に、同じ業種においてどういった指定商品・指定役務で商標登録がされているかといった商標調査を行うことも有効です。