記述的商標(3条1項3号)

 商標法3条1項3号は、商標登録を受けることができないものとして、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」を規定しており、一般的登録要件を規定している同3条の中で実務上代表格的な規定です。
 同商標は、記述的商標と呼ばれ、取引上、普通に使用されるので一般的に自他識別力がなく、また、公益的観点から一私人に独占させるのは適切でないという理由により、不登録事由とされており、下記「ワイキキ事件」最高裁判決が記述的商標該当性判断の規範とされています。

<参考>商標審査基準

 

● 最判昭54・4・10 昭和53年(行ツ)129 裁判集民事126号507頁、判時927号233頁 「ワイキキ事件」
「 商標法三条一項三号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であつて、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であつて、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。叙上のような商標を商品について使用すると、その商品の産地、販売地その他の特性について誤認を生じさせることが少なくないとしても、このことは、このような商標が商標法四条一項一六号に該当するかどうかの問題であつて、同法三条一項三号にかかわる問題ではないといわなければならない。そうすると、右三号にいう「その商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」の意義を、所論のように、その商品の産地、販売地として広く知られたものを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであつて、これを商品に使用した場合その産地、販売地につき誤認を生じさせるおそれのある商標に限るもの、と解さなければならない理由はない。
 原審は、本件商標が、その指定商品との関係上、その商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、かつ、これをその指定商品について使用するとその商品の産地、販売地につき誤認を生ずるおそれのある商標であつて、商標法三条一項三号及び四条一項一六号に掲げる商標に該当する旨を認定判断しており、この認定判断は、原判決挙示の証拠関係及び説示に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。」

記述的商標1

 

<参考(原審:S53.6.28 昭和52年(行ケ)184 判タ372号146頁)>
 「ワイキキ」は、本件商標の登録された昭利四五年四月当時すでに、「ワイキキ海岸」及びこれに隣接した繁華街を含む観光地域の総称としてわが国においても著名であつたというべきであり、しかも、同地における代表的土産品の一が花香水であつた以上、「ワイキキ」の文字からなる本件商標をその指定商品中香水等の化粧品に使用した場合には、一般の需要者をして、その商品が「ワイキキ」で生産販売された土産品であるかのように誤認させるものがあり、また、その他の指定商品について使用した場合にも、その商品が観光地「ワイキキ」で生産販売される商品であるかのように誤認させるものがあるといねざるをえない。
 したがつて、本件商標は、指定商品との関係上、商標法第三条第一項第三号にいう「商品の産地、販売地…を普通に用いられる方法で表示する標章」からなるとともに、同法第四条第一項第一六号にいう「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある」ものにも該当する。

 

● 最判昭61・1・23 昭和60年(行ツ)68 裁判集民事147号7頁、判時1186号131頁
「 商標登録出願に係る商標が商標法三条一項三号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず、需要者又は取引者によつて、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもつて足りるというべきである。原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、本件商標登録出願に係る「GEORGIA」なる商標に接する需要者又は取引者は、その指定商品であるコーヒー、コーヒー飲料等がアメリカ合衆国のジヨージアなる地において生産されているものであろうと一般に認識するものと認められ、したがつて、右商標は商標法三条一項三号所定の商標に該当するというべきである。」

記述的商標2

 

<参考(原審:S59.9.26 昭和58年(行ケ)156 無体例集16巻3号660頁、判タ543号317頁)>
 Georgia(ジヨージア)はアメリカ合衆国東南部の州の名であるが、わが国における現今(審決時においても同様)のアメリカ合衆国に関する知識の普及度からみれば、本願商標の指定商品の取引者・需要者が本願商標を見るとき、その大多数の者は、必ずしもそれが州の他を表わすものと正確に認識はしないとしても、これを少なくともアメリカ合衆国内の地名を表わすものと認識することは明らかである。そうすると、仮に原告主張のとおり、ジヨージア州において現実に本願商標の指定商品が生産されていないとしても、ジヨージアという地名が右指定商品の産地を示すものではあり得ないと考えられる特段の事情のない限り、右取引者・需要者はその商品がその地で生産されているかのように思うであろうから、本願商標はその指定商品の産地を普通に表示する標章のみからなる商標であるといわなければならない。