マドプロ国際出願の流れ(フロー)

[作成・更新日:2018.1.10]

マドプロ国際出願の流れ1マドプロ国際出願の流れ2

 

1.マドプロ国際出願制度の概要

・マドプロとは、標章の国際登録に関するマドリッド協定の1989年6月27日にマドリッドで採択された議定書(Madrid Protocol)の略称です。標章の国際登録に関しては、すでにマドリッド協定が成立していましたが、審査期間や使用言語などの問題点が指摘され、加盟国が増えなかったため、マドリッド協定を修正する形でマドプロが採択されました。日本もマドプロにのみ加盟しています。
・マドプロ国際出願(正式には「マドリッド協定の議定書に基づく国際登録出願」、以下、「国際出願」といいます。)とは、自己の商標出願又は商標登録を基礎として、保護を求める締約国を指定し、国際的に統一された出願書類を英語(日本語はまだ認められていません。)で作成し、日本国特許庁(本国官庁)に提出すれば、指定した締約国(指定国)に同時に出願したことと同じ効果を得られる出願制度のことをいいます。商標の保護は国ごとに行われるため(属地主義)、外国において商標の保護を受けたい場合、その国ごとに直接出願を行うことが原則ですが、国際出願は、それを一まとめで行うようにするもので、手続きが簡素化されるため、出願人の労力、費用的な負担が軽減されるというメリットがあります。このメリットは、出願国が多いほど大きくなります。
・国際出願はあくまで国際段階での出願手続であり、上記のとおり、商標の保護は国ごとに行われるため、指定国ごとに商標登録の可否についての実体審査を受ける必要があります(実体審査を行わない国(無審査主義国)もあり、その指定国については、国際段階での方式審査が完了した時点で保護が確定します。)。しかし、指定通報を受けた指定国の官庁は、拒絶理由がある場合には、通報日から原則1年以内に拒絶通報を行わなければならないため、早期権利化が可能となります。
・マドプロでは、商標の権利関係は、国際事務局により一元管理されます。そのため、更新、所有権移転、名義変更などの手続を国ごとに行う必要がなくなります。

2.国際出願

・国際出願をするためには、日本国特許庁に係属している自己の商標出願又は商標登録を基礎とする必要があります(議2条(2)、基礎出願、基礎登録、以下、「基礎登録等」といいます。)。そのため、PCT国際出願のように自国を指定することはできません。
・国際出願は、① 出願人が基礎出願等の出願人又は名義人と同一、② 標章が基礎出願等の標章と同一、③ 指定商品又は指定役務(以下、「指定商品等」といいます。)が基礎出願等の指定商品等と同一、との要件を満たす必要があります(議3条(1))。そのため、基礎出願等の標章のデザインに変更を加える、当該標章に日本語が用いられている場合に外国向けに言語の表記を変更するあるいは翻訳を加えるなどして国際出願をすることは認められません。
・日本国特許庁に出願する場合、言語は英語です。日本語は認められていません。

3.方式審査、欠陥通報

・日本国特許庁(本国官庁)と国際事務局のそれぞれにおいて、指定商品等の区分や表記が国際基準に合致しているか、手数料が適切に納付されているかなどの事項について方式審査が行われ、不備がある場合には、出願人に対し、方式指令や欠陥通報がなされます。
・欠陥通報には、国際出願の指定商品等の分類に関し、規則に定める要件を満たしていないと判断した場合に、提案を記載して出願人に送付される分類欠陥通報と、国際出願の指定商品等が、分類上極めて不明確であるとか、理解できないとか、語学的に不正確であると判断した場合に、用語の修正又は削除の勧告を記載して出願人に送付される表示欠陥通報とがあります。

4.意見書、是正提案書

・分類欠陥通報に対し、出願人は意見書を提出することができます。分類欠陥通報に記載された提案に従い指定商品等の一部を削除する場合も同様です。
・表示欠陥通報に対し、出願人は、表示欠陥通報に記載された勧告に従い用語の修正等を行う場合には、是正提案書を提出します。

5.国際登録、国際公表

・国際出願は、方式審査を経て、問題なければあるいは是正された後、国際登録されます。そして、国際登録されると、国際登録日から、各指定国に直接出願したのと同一の効果が発生します。また、国際登録された国際出願は国際公表されます。
・国際登録日は、国際出願を日本国特許庁(本国官庁)が受理した日から2ヶ月以内に国際事務局が受理したときは、本国官庁が受理した日が認定され、2ヶ月以内に国際事務局が受理しなかったときは、国際事務局が受理した日が認定されます。

6.国内段階(指定通報、保護認容声明、暫定的拒絶通報)

・指定通報は、正確には「指定国の領域指定の通報」といいます。国際出願が国際登録されると、国際事務局は、領域指定された官庁(指定国官庁)に指定通報を発送します。そのため、PCT国際出願では、出願時はすべてのPCT加盟国を指定したとみなす「みなし全指定」となるのを、最終的には特許を得たい国を決めた上で、それらの国に対してその旨の意思表示をするといった国内移行手続が必要ですが、マドプロ国際出願では、そのような国内移行手続は不要で、指定通報をもって自動的に国内段階に移行します。
・指定通報を受けた指定国官庁は、指定通報日から1年又は宣言により18ヶ月以内に、国内法令等に基づき保護を認めるのであれば、保護認容声明を、保護を与えることができない場合には、暫定的拒絶通報を出願人に送付しなければなりません。この期限内に暫定的拒絶通報を送付しなかった場合は、その指定国においてその標章は自動的に保護が認められることになります。暫定的拒絶通報は、拒絶理由通知に相当し、そのため、これに対し、出願人は、国内出願と同様、意見書や補正書を提出して反論することができます。

7.その他

セントラルアタック
・国際登録日から5年間は、国際登録の保護は基礎出願等に従属することとなっています。そのため、国際登録日から5年以内に、基礎出願が拒絶、取下げ、放棄となった場合、又は基礎登録が期間満了、無効、取消しとなった場合には、その範囲内で国際登録の全部又は一部が取り消されることになります。これをセントラルアタックといいます。
・ただし、国際登録が取り消された日から3ヶ月以内に指定国に商標出願を行えば、当該出願は国際登録日(又は事後指定日)にされた商標出願とみなされます(国内出願への転換(トランスフォーメーション))。

事後指定
・国際登録された後に、指定国を追加することができます。また、国際出願時に指定した指定商品等を一部又は全部の指定国において除外等していた場合に、国際登録の範囲内で指定商品等を追加することができます。
・事後指定により追加した指定国又は指定商品等に係る商標権の存続期間は、事後指定日からではなく、国際登録日から10年となります。そのため、事後指定に係らない商標権の存続期間と同時に満了することになります。もちろん更新は可能です。

参考)
「平成30年度知的財産制度説明会(実務者向け)テキスト」(特許庁)
・ マドリッド議定書(Madrid Protocol) - 標章の国際登録に関するマドリッド協定の1989年6月27日にマドリッドで採択された議定書(Protocol Relating to the Madrid Agreement Concerning the International Registration of Marks)参照仮訳