商標法4条1項10号

[作成・更新日:2018.7.20]

 商標法4条1項10号は、商標登録を受けることができないものとして、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」を規定しています。
 ここでは、商標法4条1項10号が争点となった審決取消訴訟の判決を紹介します(※ 判決は適宜追加更新していきます。)。

<参考>商標審査基準(第4条第1項第10号)

 

● 知財高判平30・7・19 平成30年(行ケ)10028,29 3部 無効不成立審決→請求棄却

平成30年(行ケ)10028,29

【判決要旨】
・被告は、開設当時から電子掲示板「2ちゃんねる」(本件電子掲示板)の運営に関与し、本件電子掲示板の管理人としてマスコミ等にも取り上げられたことから、本件電子掲示板の略称である引用商標1及び本件電子掲示板の名称である引用商標2は、被告による本件電子掲示板に係る事業を示すものとして周知性を獲得した。そして、それ以降も、被告は、本件電子掲示板に係る事業に実質的に関与していた。事業が譲渡された事実や、原告が本件電子掲示板に係る事業を承継した事実はない。
・そうすると、本件商標1,2は、「他人」の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標ではない。
・よって、本件商標1,2の商標登録は、商標法4条1項10号に該当しない。

【キーワード】 他人、引用商標の周知性

 

● 知財高判平28・6・23 平成28年(行ケ)10003 3部 取消決定→請求棄却

平成28年(行ケ)10003

【判決要旨】
・引用商標1は、本件商標の出願日当時において、申立人らが生産、販売する商品を表示するものとして、少なくとも関西地域及び徳島県における取引者、需要者の間において広く認識されており、その周知性は、本件商標の登録査定時当時においても、なお維持されていた。
・本件商標の上段部分と下段部分は、その外観においても、そこから生ずる観念においても、不可分的に結合しているものではないから、本件商標に接した需要者らにおいては、上段部分と下段部分を分離して観察することもあり得る。そして、上述のとおり、引用商標1が周知商標であることから、取引者、需要者が、下段の「桃苺」の文字部分に特に注目することは、自然にあり得る。したがって、本件商標においては、下段の「桃苺」の漢字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分と認識されるから、当該部分を本件商標の要部として把握することができる。そうすると、本件商標と引用商標1とは、そこから生ずる称呼及び観念をいずれも共通にする商標であり、それらが同一の商品に使用された場合、取引者、需要者にとって、互いに紛らわしく、その出所について混同を生ずるおそれがあるといえるから、両商標は、類似する商標である。
・よって、本件商標は商標法4条1項10号に該当する。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、引用商標の周知性

 

● 知財高判平27・12・24 平成27年(行ケ)10083,4 2部 無効成立審決→審決取消

平成27年(行ケ)10083,4

【判決要旨】
・被告自身による引用商標に関する宣伝広告等は活発とはいえない上、新聞・雑誌等によりこれが報道された機会も少ないと認められる一方、引用商標を付した本件電子瞬間湯沸器の販売台数等は明らかではなく、全国的規模の市場に対する販売実績は極めて少ないものと推測される。このような宣伝広告及び販売実績等を考慮すると、いずれの引用商標も、本件商標の登録査定時において周知性を有していたとは認め難い。
・よって、本件商標1,2は、商標法4条1項10号に該当する商標ではない。
・なお、被告が自社ホームページで宣伝活動をしたことは、ホームページを開設することが誰でも直ちに行える以上、それのみで周知性を裏付けるものとはならない。

【キーワード】 引用商標の周知性