商標法4条1項11号(商品・役務の類否)

[作成・更新日:2018.9.20]

 商標法4条1項11号は、商標登録を受けることができないものとして、「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」を規定しています。
 ここでは、商標法4条1項11号のうち、商品・役務の類否が争点となった審決取消訴訟の判決を紹介します(※ 判決は適宜追加更新していきます。)。

<参考>商標審査基準(第4条第1項第11号)

 

● 知財高判平30・8・29 平成30年(行ケ)10014 2部 拒絶審決→請求棄却

平成30年(行ケ)10014

【判決要旨】
・「金属加工機械器具」と「金属加工機械器具用刃物」、「製材用・木工用又は合板用の機械器具」と「製材機械器具用刃物,木工機械器具用刃物,合板機械器具用刃物」、「栽培機械器具」と「除草機械器具用刃物」は、同一の事業者によって製造、販売されており、また、同一の事業者の表示が付された両商品も存するという事情を考慮すると、両商品に同一又は類似の商標が付された場合、需要者は、同一の者の製造又は販売にかかる商品であると誤認するおそれがあるから、両商品は類似する。

 

● 知財高判平29・11・14 平成29年(行ケ)10132 4部 拒絶審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10132

【判決要旨】
・本願商標の指定商品と引用商標1の指定商品とは、①電子機器を稼働するために構成上不可欠なもので、その用途及び機能において密接な関連を有し、②両商品を生産している事業者が相当数存在し、③総合ショッピングサイトや家電量販店だけでなく、電子部品を専門に扱う相当数の販売店においても、両商品が販売され、④両商品の需要者は、一般の個人需要者や電子機器等の製造メーカーにおいて共通する場合があるなどの事情に照らすと、両商品の原材料及び品質が異なること、完成品と部品の関係にないことなどを考慮したとしても、両商品に同一又は類似の商標が使用されるときは、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同するおそれがあり、類似する商品である。

 

● 知財高判平28・2・17 平成27年(行ケ)10134 2部 無効不成立審決→審決取消

平成27年(行ケ)10134

【判決要旨】
・第10類の「医療用機械器具」は、医療行為に供するものと解されるところ、引用商標の指定商品は、医療行為に供する程度の品質、性能を保有する体組成の測定機器を指す。これに対し、第9類の「測量用・・・の機械器具」は、医療行為に供しないものと解されるところ、本件商標の指定商品は、体組成や体重の測定機器を指し、測定の対象自体は引用商標の指定商品と重なる部分があるが、医療行為に供しないという意味において、医療行為に供する場合よりも、品質や性能が劣るものである。
・類似商品コードは、第10類「医療用機械器具」が「10D01」であり、第9類「測定機械器具」が「10C01」であって、商品として類似しないという取扱いがなされる。
・しかし、本件商標と引用商標の指定商品に関連する取引の実情をみると、家庭用の体重計の需要者である一般消費者は、医療用の体組成計、体重計も入手可能な状況となっており、また、医療用と家庭用の両方の製品を製造し、家庭用のシェアの大半を占める原告と被告の製品に日常的に接することになるから、医療用製品の出所について、家庭用製品の出所と区別して認識しにくくなっており、さらに、医療用と家庭用の体重計、体組成計の性能等が近づきつつあり、性能による明確な区別も困難である。
・よって、本件査定時においては、医療用の「体脂肪測定器,体組成計」と家庭用の「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」は、誤認混同のおそれがある類似した商品である。

 

● 知財高判平28・1・13 平成27年(行ケ)10096 2部 無効成立審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10096

【判決要旨】
・引用商標の指定商品「電子応用機械器具及びその部品」には、「電子計算機用プログラム」が含まれ、一方、本件商標の指定役務中「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等」の役務で提供される内容は、「電子計算機用プログラム」であるから、商品「電子計算機用プログラム」の製造・販売者がかかる役務の提供を行うことも少なくない。
・商品「電子計算機用プログラム」の需要者と、役務「電子計算機用プログラムの提供」の需要者は、いずれも、コンピュータ等を用いて電子計算機用プログラムを使用する者であるから、共通する。
・電子計算機用プログラム自体の流通と、電子計算機用プログラムの提供とは、共にインターネット等の通信回線を通じて行われることもあるから、取引形態も共通する。
・よって、商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標を使用する場合は、同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがある。